仁叟寺表参道より惣門をくぐってすぐ左手に、永代供養墓地「眞佛苑」がある。

 眞佛苑は、平成一二年(二〇〇〇)に完成した新しいかたちの墓地である。

 完成した当初は県内でもまだ稀少であった独立型の永代供養墓地であり、「上毛新聞」等でも紹介された。

 夫婦や兄弟のみや単身者など家にこだわらない方々を対象とした墓地で、三十三回忌法要まで仁叟寺で責任をもって供養をし、それ以降は合同永代供養堂「普同塔」に合祀を行う予定である。

 年に一回の合同慰霊供養を行うほか、宗派にもこだわらない比較的自由な形式の墓地である。

 現在、一〇名ほどの申し込みがあり、五輪塔型の墓碑が林立している。

 眞佛苑墓地の説明として、前述した「上毛新聞」の記事と、仁叟寺で発行している眞佛苑の案内書を紹介する。

上毛新聞記事

 単身・夫婦専用墓地開設

 あなたのお墓護ります

 吉井・仁叟寺 三十三回忌まで寺が法要

 独身者や子供のいない夫婦らを対象とした単身・夫婦専用墓地「眞佛苑」が、吉井町神保の曹洞宗寺院仁叟寺(渡辺啓司住職)に開設された。子供などお墓を護る家族のいない人でも宗派を問わず使用できるもので、渡辺住職は「家族のあり方が変わっていく中で、跡継ぎのいない人でも安心できる墓地をつくりたかった」と話している。

 少子化や核家族化が進むなどライフスタイルが多様化する中で、墓地についても「先祖代々のお墓」という従来のあり方が大きく崩れつつある。また、未婚や離婚によって独身であったり、子供がいない、子供の転勤でお墓を護ってもらえないなどのケースでは、一般墓地の購入が難しいのが現状という。

 多くの場合は、合同墓やロッカー形式の共同墓に頼らざるを得ないが、中には「独立したお墓に入りたい」と希望する人も多く、渡辺住職が「一人だけ、夫婦だけでも入れて長い間きちんと供養を受けられる独立墓が必要」と発案し、境内に開設した。

 眞佛苑墓地は、一区画九〇cm四方で墓石(高さ約一二〇cm)つきの独立墓。地下部分に二人分のお骨が収容でき、お墓を護る人がいなくても寺側が責任を持って三十三回忌(没後三三年)までの法要を行う。

 三十三回忌以降は無縁仏などが葬られる「普同塔」(右写真)に合葬し、年一回の合同慰霊供養が営まれる。また、先祖代々の墓が遠かったり、最終的なお墓が決まっていないなどの場合、一時的に埋葬しておく「一代墓」としての使用も可能という。

 費用は墓地代・墓石代・永代供養代を合わせて百万円。独自の墓石を希望する場合は、個別に注文して設置することもできる。同寺では、墓地について悩んでいる人の多い県内都市部や首都圏を中心に希望者を募集している(「上毛新聞」 平成一二年 (二〇〇〇)七月一二日)。

仁叟寺眞佛苑案内書

 重厚な山門をくぐると広がる趣のある境内、町指定の重要文化財の本堂・山門はじめ二十棟の伽藍、群馬県の天然記念物の樹齢五百年の榧の木。凛とした静寂に出会える「仁叟寺」はそういった寺院です。

 私はよくこれからのお墓について考えるのですが、その一つに時代とともに変化するお墓に対するここの価値観の相違というのがあります。きっと従来のような先祖代々の墓地へ家族全員が入るというスタイルは、家族の形態そのものが変わっていくように確実に変化していくような気がします。しかし、こうなると後継者がいない方や単身の方のお墓はどうなるのだろう?建墓したのはいいけれど、お墓に訪れてくれる人がいないとなると管理などもどうするのだろう?生きている時に考えるのはちょっと気が引けてしまいがちなお墓のことですが、実は自分のライフスタイルの最後の形なのです。どうせ素敵に生きるなら締めくくりまでしっかりと考えておきたいものです。

 「仁叟寺」では、そんな新時代が抱える問題を解決するために単身・夫婦・親子・兄弟姉妹墓地「眞佛苑」を完成しました。歴史と自然に囲まれた美しい墓地。それだけでなく、ここは宗旨・宗派も問わず受け入れも可能であります。伝統を護ることは大切ですが、由緒あるお寺がしっかりと時代の流れを受け止めていることも、また現代に生きる者のつとめでもあると考えます。

 本堂の前にある四百年という長い間撞き継がれる梵鐘は、今も人々の心にその尊い音色を響かせています。単身・または夫婦だけになっても世の中から取り残されることなく安心してご供養をお願いできる、「永代供養墓 眞佛苑」はそういったお墓であります。

 眞佛苑墓地は、一区画九〇cm四方で墓石は高さ約一二〇cmの独立墓です。地下部分に二人分のお骨が収容できます。お墓を護る人がいなくてもお寺が責任を持って亡くなった後の四十九日、一周忌法要から三十三回忌までの法要を行います。三十三回忌以降は総合永代供養塔の「普同塔」に合葬し、年一回の合同慰霊法要が営まれます。また、先祖代々の墓所が決まっていないなどの場合、一時的に埋葬しておく「一代墓」としての使用も可能です。

 費用は、1.墓石代・2.墓地代・3.永代供養代・4.墓石字彫代を合わせて百万円。墓地についてお悩みの方は是非、お気軽に当寺までお問い合わせ下さい。

七 無縁墓地

 さまざまな事情のため墓地を護る人がいなくなり、荒廃してしまった墓地のことを無縁墓地という。とくに、一カ所に集められることが多く、地蔵菩薩を中心に祀り無縁墓地として残し、供養を行う場合が多い。

 仁叟寺の西門から、まっすぐ西に直進した場所にある歴代住職墓地の隣に、無縁塔が集められた場所がある。新旧の墓石が集められており、毎年三月に行われる恒例の行事、大般若法要にあわせて行われる大施食会法要の際に、供養を行い卒塔婆が建立される。

 ほか永代供養塔兼納骨堂の「普同塔」の上部に、無縁墓石が安置されている。最上部には、青銅製の地蔵菩薩立像が祀られている。堂内にも銅製の地蔵菩薩坐像が祀られており、当寺で責任を持って供養を行っている。